夜のピクニック

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

ある進学校の恒例行事「歩行祭」。全校生徒で一晩歩くという行事。その一日、ひと晩の物語。主人公の貴子と、図らずも同じクラスになってしまった異母兄弟の融、二人を取り巻く友人たち。
一言でいうと「懐かしさ」がこみ上げてくる話。
たった一夜の話なのに、高校3年間が凝縮。
たくさんの小さなエピソードに「あるある!」と思う。
「海が近い、と思うと、なぜこうも気持ちがふるい立つのだろう」
という一文のわくわく感に納得。
足の痛みや体の疲れをだましだまし、友人たちと語らいながら、ただ、歩く。
また、だんだん疲れてきて、黙ったままひたすら歩く。
そんな時、体は惰性で歩いているが、頭の中で、いろいろな思いが浮かび、廻る感じ。
夜になり、暗闇の中をあるく、昼間とは違った高揚感。
修学旅行や学園祭を思い出す。
夜、枕を並べて横になり、お互いの顔を見るのではなく、天井をみながら話す感じ?
いつもとは違った友達の一面。急にアツく語りだしたり。
いろんな個性的な面々がいたなぁ、
声だけは大きいお調子者、男の子に媚びる子。(私たちの時代は「ぶりっ子」という言葉があったなぁ)でもこの話の中では悪者はおらず、みんなクライマックスを盛り上げる。
周りが知らない(はず)の二人の間に流れる「空気」。そのお互いを意識する空気に周りの友人達が気が付かないわけがなく、いろいろおせっかいをしたり、探りを入れたりしてくる。
「友達が自分をつくるんだなぁ」「周りの人がいて、自分がいるんだな」とひとりじゃない幸せを感じる物語。