葡萄が目にしみる

葡萄が目にしみる (角川文庫)

葡萄が目にしみる (角川文庫)

夜のピクニック」がさわやかな読後感なら、こちらはせつない読後感。
林真理子は、エッセイはワタシは好きではないけれど、この話と「本を読む女」はほんとに面白いと思う。大好きです。ずいぶん昔にでた本だけど、自分の本棚から何度か持ち出して読んでる本。
夜のピクニック」の主人公は、友人に恵まれ、クラスメイトに支えられ、まぁ、「大人になって思い返してみれば、いい思い出しか、残ってない、思い出せない」系のいってみれば「偽善的な」、キレイな話だけど、こっちは、もーほんとせつない。
親友やクラスメイトや、あこがれの先輩とのやりとりには、チクチクととげがあって、心にかすかに傷を残す。表には出さないけど、「裏切られた」「だまされた」「見返してやる」「せいせいする」そういう、友情とは裏腹の、でも、絶対にある、打ち消せない感情、そしてコンプレックス。ぜったい人には言えない、ちょっと過剰なくらいの自意識。
時代は違えど、こっちも「あるある!」という感じの青春小説。

この小説を読んでいるとなぜかいつもバックグランドに松任谷由実の「Destiny」が流れます。