風に舞い上がるビニールシート  

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

表題作を含む6編の短編集。この作者の作品は初めて読みました。
『大切ななにかのために懸命に生きる人たちの、6つの物語』、だそうです。それぞれ全く違うシチュエーションと登場人物、結末も様々、でもどれも胸がギュッとなりました。1つ目の「器を探して」、大好きなもののために自分は裏方に回って、振り回されながらも懸命に働く弥生、恋人と仕事どちらをとるか、というありがちな選択を迫られ、、、で、文字通り、ブツッと(言葉は悪いが)「キレた、、、」んだけど、キレて、どうなったか描かれず、ブツッ、、、と話も終わるので、ものすごい怖い、、、。こんな話ばかりなのかとちょっと怖くなったけど、次の「犬の散歩」では恵利子をとりまく人々にほろっとさせられる、最後に報われる話で。「守護神」は実は文学青年の夜間大学生が、学内で有名な(でも謎の)女性にレポートの代筆を頼みに行くという設定も結末も痛快だし、、、「ジェネレーションX」は通販の企画の主人公と扱う商品の会社の若手営業マンとがクレーム客に謝りに行く車で、若手営業マンが携帯で友人と話す行為に最初は辟易しながらもだんだん彼のバックグラウンドや人柄を理解して展開していくというロードムービーみたいな形で(これが一番好きだったな)。もちろん表題作もしかり。
長さもちょうどいいので旅行バックに入れていく本としてお薦めっ!という感じデス。