哀愁的東京 重松 清

哀愁的東京 (角川文庫)

哀愁的東京 (角川文庫)

中学生が主人公でない、新興住宅地が舞台でない、
重松清の小説は初めて読んだ。
まずは主人公の、そして、そのあとは主人公と関係がある登場人物の、それぞれノスタルジックな小さな物語。
それがゆるやかにつながって続いていく。
どの主人公も過去に切なかったり、後悔だったり、そういう思い出を持っていて、「もし、あの日に帰れたら、こうするのに」という思いを心のなかに、ちいさな傷を抱えている。
昔の思い出に「今」再会し、あぁ、時間はどこにも流れているんだ、ということを実感する。
再会したことで、それが再出発の機会になったり、過去をふっ切ったり、自分の存在を確認したり、、、。
登場人物はそれぞれ「狂気」をこっそりかかえていて、張り詰めていて、もろい。それを自分で我慢したり、それに立ち向かったりしながら、懸命に今を暮らしている。もしくは川の流れのように現在の暮らしのなかで、受け流したり、、、どうしたって時は過ぎていく。
なんだか暗く、よどんだ、夕方みたいな小説。(タイトルからしてそう。)
進藤が昔出した絵本に感銘を受けて、人生を決めた、編集者のシマちゃん、彼女が唯一、物語を明るいところ、たそがれていないところに引き戻してくれる。彼女も報われないんだけどね、、、。