ナイフ 重松 清

ナイフ (新潮文庫)

ナイフ (新潮文庫)

小学生や中学生がいる平凡な家庭と学校が舞台の短編が5つ。
ある日突然、クラス全体から「ハブ」にされる少女。彼女は、自分が泣きわめいたり、許して、とリーダーの子にいったり、取り乱すせば、いじめてる奴らの思うつぼ、と思うから、明るく我慢する。時が経てば、飽きて、ターゲットは変わるだろうと。やがて、あきらかにいじめを暗示するいやがらせの手紙がポストに入るようになったり、親にもしれるようになる。「運が悪かっただけ、」と両親にまで言う。親が出ても解決にはならない、先生が出て来たら事態が悪化する、と自身のプライドで我慢する。
やがて、ある日突然、ターゲットは代わる。リーダー格の子は、彼女に新しいターゲットの子を一緒にいじめるように言う。新しいターゲットの子は、いままでいじめてたのは、リーダーが怖かったから。ごめんなさい、助けて、と彼女に懇願する。。。。さて、彼女は、、、。
続く話では、本当に悲惨ないじめを受けている男の子、父親はそんな息子に負けるな!と言う。自分ではっきりいじめている子に問い正したり、先生に言ったりするようにいう。自分の息子がそんな情けないはずがない、がんばれ!と言うが、学校でも家でも理解してくれるひとが、おらず、ついに体を壊して登校できなくなってしまう。
最後の話は、元教師の妻と、娘の日記について納得のいかない指導をする担任の女性教師とを絡めた話。これも面白かった。自分がまだ教師を続けていれば、もっといい先生になれたのに、、。2人目の子供が生まれ、育児と教師の仕事の両立を「なんとかなるわよ」とがんばっていた妻だったが、自分も仕事を思いっきりやりたい時期で、思うように切り上げて帰宅したりできなくなり、家に入ってくれとお願いしたことをいまでも後ろめたくおもっていたこともあり、、、。
それよりなにより、教師ってホント大変。いろんな子供はいるし、親もいるし、一生懸命なのにかえって空回りしちゃったり。抗議する親もいれば、認めてくれる親もいるし、、でも、ちゃんと日記をかかなかった理由ははたして、、、。
あまり短編集は好きではないのですが、これはひとつひとつ、ちゃんと希望をもてるような雰囲気で明るく終わっていて、重さのある作品だとおもいます。
思いテーマもあるし、フィクションだけど、なんだかリアルに感じて、今の学校が怖くなったりするけど、まあワタシが中学生のころも、いじめや仲間はずれもあったけどね、自分だって思えば無視された時期もあったし、そういえば、引っ越しちゃった子とかもいたような気が。今みたいに陰湿じゃなかったとは思うけど子供にとっては毎日生活する場所だし、深刻だと思う。
最初の話のいじめのリーダーがこの短編集を読んだらどう感じるのだろう。今時の子って、何も感じないのかな。難しいかな。本なんか読まないんだろうな。
最後に、巻末の作者の「文庫版のためのあとがき」に涙がでましたよ、ワタシは。