風林火山 井上靖

風林火山 (新潮文庫)

風林火山 (新潮文庫)

「ヤマ勘」で、テストで出そうなところを狙って勉強したり、分からないけど一か八かで回答をマークしたり、、、この「ヤマ勘」は、「山本勘助」から来ている、という説をどこかで読んだことがある。なるほど、山本勘助は冒頭から「ぜったい出来る」「絶対勝つ」「負ける気がしない」「負ける訳がない」と自信たっぷりで自説を唱える。一か八かで切り込んでも、勝ってしまう。また、信玄の顔色をみて、「親方様は乗り気ではない」とか「不審に思っている」とか「ぴん!」と来て勘助も「そうすべきではない!」とか当然のことのように言う。信玄はどうして自分もうっすらそう思っていた訳だから、勘助の意見を尊重することになる。そんなとこからカンはカンでも「ヤマ勘」っていわれるのかな、なんて。でも「ヤマをはる」とかも使うから違うとも思うけど、、、。
ま、いいです。
異様な風貌とびっこで、周りから怪しまれ信用されなかった勘助は、若い武田信玄に仕官することになり、「この人のためなら死んでもいい」と彼の軍師として尽くすようになる。信玄と由布姫に対する強い気持ちと崇拝(って違うか、、)が彼の支え。何を考えているかわからない独特の雰囲気の勘助が、どんどんいい人に見えてくる。彼を本当に信頼して慕う信玄もすてき。勘助をかるがるだましちゃう由布姫もすてき!勘助が、「こいつは味方」「こいつは信じる」とすぱっと決めるところが痛快。「勝つ」と信じることで勝って来た勘助が、高坂昌信に「負けるかも」と言われてはっと、して彼の意見に耳を傾けるところが、ワタシのなかでお気に入り。上杉謙信との戦いで死ぬまでの彼の半生の物語。文庫本で薄めの1冊ということもあるけど、テンポもいいし、かなり面白くて一気に読めちゃいます。
折しも今年の大河ドラマ!(だから読んだっていうのもあるけど)大河では、この小説の前、勘助がずいぶん若いころにさかのぼって話は始まるみたいですけどね、楽しみ。